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いつか見た水鏡

なくしてしまった何かを 辿ったことのある道を探して いつまでも彷徨い歩くとき 水に映る灯りの色が 滲んで溶けているのを見て 探していたものも もうとうにそんなものなどは 溶けてなくなっているのではないか と思うようになった
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いつか見た朝

朝一番のバスを待つとき 小雨が降りそうな雲の間に 朝日の明かりがにじみ出す 波の音しか響かない耳に 遠くからバスのエンジン音が だんだんと近づいてくる 気が付くと散歩の人たちが ちらほらと砂浜に下りていき 海岸沿いの窓には 早起きの明かりが灯りだす
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いつか見た帽子

夕方に少し涼しい風が吹く頃 土手の向こうの川へ下りてゆく 懐かしい何かを求めているようで その何かなどみつかるわけもなく 求めてるものは目を瞑ったときに 見えてきたりするものかもしれない
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いつか見た雲

いつか見たつもりの雲も 雲が二度と同じ形をしないことも 今みてる間にも雲は形を変えていることも よくわかっていながら その瞬間がどこかにあったような そんな気がするのが夕暮れなのかもしれない
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いつか見た狭間

大昔は海だったというところも 150年の間には大都市の中心になり 多くの人々が踏みしめて固めた道も 大連休の谷間には いつにない寂しさが漂い 海の浅瀬を歩くような 不思議な感覚が伝わってくる
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いつか見た運河

休日の静かな運河には 既に早い終電車が去ったあと 何の音もしない 静かな時だけが流れていた
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コスモスの空

同じ雲、同じ花は 二度と生まれては来ないけれど 同じような光景は 何度となく見たような気がする
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暖かい海

目を瞑ると海の景色が浮かぶ それは岩場がずっと水平線まで続くような 波が遥か遠くで砕けると思えば 目前の足に絡むように 間近に飛沫を上げたりするところで そこにはいつでも誰もいないのである
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海の見える丘

懐かしい入江に行けば 忘れていた何かに会えるかもしれない それは心に響く嬉しいものなのか 溜息の出る辛いものなのか 昔と変わらぬ入江までの砂利道は 足取りをだんだんと重くさせてゆく
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にわか雨

海まで歩こうとしているとき 晴れた空から雨が降る こんなときに限って いつもある傘は置いてきた あたりに雨宿りするようなところはなく 海まではまだしばらくあるが 戻るには大分来過ぎてしまった 雨はすぐに止むのだろうが 心にまで雨が到達してしまうと 海の方には足は向かなくなる 早く帰っても何…
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灯台の空

この古い灯台に来たのは 春だったか、秋だったか 真夏の灯台の風は涼しい 夏休みの残りの日を数えるのは まだやめておこうと青い空を見上げる 汗が出る昼下がりの日差しは まだまだ強い夏の日だ
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いつかの風景

今まで何度となく歩いた道を 何も考えずにただ歩いていると ふと今がいつなのか分からなくなったりする 辛い別れをしたときも 忘られぬ旅をして帰ってきたときも 夕暮れにこの道で 日の沈んだ空を見たのだろう いつか今日のことも 思い出す瞬間が どこかで来るのかもしれない
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日没

夕暮れは川沿いの道をずっと 歩いて海まで行きたくなる 海に着く頃には真っ暗な 夜になってしまうというのに
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紫陽花の道

無くしたものは取り戻せるのか 今までの道程を全て戻ったとしても 無くしたものを見落としてしまっては あとは何もない場所を 永遠にさまよわなくてはならない 惜しいけれど諦めてしまえば この先にもっと大切なものを 無駄になくさなくてすむのだと そう思えば気も楽になるものだ …
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小雨の午後

月の終わりが近付くと 今年の残りの月日を気にする 時の流れが早いと 決まり文句しか出ないと 少し寂しい気持ちになる
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夏草を刈って

砂利を踏みしめる音が 懐かしいのか心地いいのか このまま砂利の上を ざくざくと音を立てて ずっと歩いていたい気になった 秋はこの河原にも一気に訪れて 川の流れが静かになったような そんな気がしたのは 気のせいだろうか
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雨の唄

雨の歌は 雨の日に聴いていたわけでもないのに 昔に雨の湿った部屋で ひとりで聴いていたように 錯覚することがある 秋晴れの小路で 爽やかな風の吹いているときに ふと雨の歌などを思い出すとしたら 本当に雨の歌を聴いたのは 晴れの涼しい午後だったのかもしれない
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季節を瞑り

私の中の四季が 想い出で作られているのなら 暑さも寒さも そのうち全てがせつない季節に なってしまうような気がする
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静かな濱

嵐の去った海は 流れ物が山になる溜り場もあれば 全ての汚れが拭われてしまうところもある
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彼岸の頃

残暑が厳しかったり やけに涼しい日があったり いろんな年があったとしても 彼岸には赤い花が咲く
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道程

ケーキを買いに出かけたが いつもとは違うところでと思い 少しずつ家から離れて行く 森のような木陰の道を抜けると 日差しの暑さにふらふらなる こんな暑い中をケーキを持って 長い道のりを帰っては とても駄目だと思い 結局はいつもところへ戻ってしまった
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税関前で

何かから逃れて辿りつく場所は それ以上先には行けない 岸壁の果てだとわかっているのに いつもただ見つめることしかできない 波のない静かな海しかないと わかっているのに
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青い空を見上げて

あの人がいなくなってから もう幾回の夏が過ぎていったのか 最後に交わした言葉の記憶を 引き出すことも困難になったのは 悲しいことだというのか やっと忘れることができたということなのか そろそろ遠い昔と呼んでも いいのではないかと思うようになった
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運河の雲

港の方を見ると 白い雲が煙を焚いたように 空高く上っていた いつか見たもの そんなものはあるのだろうか 今見た雲は初めてみるはず またこの雲を見ることは もうないのだろう いつかこの写真を見たとき これがいつのものだったか 思い出すことがあるのだろうか
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去年とは違う花

町の中に咲く花は 町の汚染に耐えながらも 町の変化を見続けている そしていつか変化の波は 雑に咲く草花にも及び 町の花はいつの間にか消えてゆく
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夕空

嫌なことが少し心に残っていても 沈む夕日を見ている間は そんなことは思い出さないで いっそのこと嫌な記憶は全て 彼方の闇へと沈めてしまおうと思う
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雲ばかりを見て

朝から雲の動きばかりを追っていた あの雲が雨を降らせるのだろうか いつ雨が降ってくるのだろうか そんな不安はただの不安だけで 少し風が強かったものの 天気が大きく障害になることはなかった もっとどこか遠くへ行けたかもしれないと 思った頃には日が傾いていた
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終わりのとき

あと少しで上りが終わる 頂上に着いてしまったら その先はどうなっているのだろう 目標が消えるとき それ以外の何もかもが 無くなってしまうような気になる 上るのを止めようか 上り詰める前に 元に落ちてゆくというのか 未来はどこにあるのだろうか
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点線の雲

誰もいない場所で 昔に嗅いだことのある草の匂いがしたら 誰か思い出そうと頭の中が回想する 幾ら返しても誰にも辿り着かない そこには誰もいなかったのだろうか 大切な瞬間にあいつはいつもいなかった 草の匂いはただの秋の気配だったのか
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